COLUMN コラム

【自活研・小林理事長の自転車コラムその57】~自転車好きの子どもを育てたい~

 2013年まで自転車活用推進研究会は毎年、年末に東京ビッグサイトで開催する「エコプロダクツ展」に自転車ブースを出展し続けていた。
13年は8回目だったが、その時のエピソードである。貧乏NPOなのでブース代にも事欠く始末だが、シマノ、日本自転車普及協会、ブリヂストン、パナソニック、キャットアイ、リンプロジェクト、技研製作所、山と渓谷社のご協力を得てなんとか出展することが出来た。
自転車といえばサイクルモードだが、エコプロダクツ展はエコが切り口なので、最初の頃はなぜ自転車がエコか、という説明がたいへんだった。
近年では「自転車のマナーが悪い」とねじ込む人たちの対応に冷や汗をかくこともある。ルールはもちろん、自転車に関する初歩的な情報を伝えて、楽しい自転車生活に気がついてもらおうと2012年から「自転車ECO学園」という模擬学校形式にしていた。

 最新鋭の機械式地下駐輪場には目を見張る人が多い。
 こちら側がビックリするのは、空気入れ競争とかタイヤのパンク修理講座に来客が絶えないことだ。
空気入れ競争は、15秒間でどのくらい空気を入れられるかを競うのだが、空気入れなどやったことがないという子どもたちがとても多い。
慣れていなくとも、高校生くらいになるとマウンテンバイク用のタイヤに4kg以上入れることが出来る。
そこで、タイヤを触ってもらい、こんなにパンパンに空気を入れれば、リム打ちパンクをほとんど起こさず、転がり抵抗も低くなって快適に走れることを説明する。
自転車を持っているか、利用している子どもたちも多いが、誰一人としてタイヤの側面に適正空気圧が書いてあることは知らない。
したがって家族に自転車愛好家がいてメーター付きの空気入れがあっても、どれくらい空気をいれればいいのか意識したことがない。
また、パンク修理講座に参加するのは母子が多かったが、ほとんどの人が英国式バルブの虫ゴムを知らない。
「4年前に買った自転車の空気が一日で抜けるので自分で修理したい」とやってきたお母さんに、虫ゴムを替えたか?と聞いてしまい、失礼な愚問を発した自分を心の奥で叱った。

 いったいいつから自転車店は自転車の扱いについてなにも教えなくなったのだろうか。
教えていても客が上の空で聞いてくれないということなのだろうか。
自転車が好き、という子どもたちばかりなのだが、安全運転を含め知っておくべきことを教えない側の責任は重い。
好きの反対は「嫌い」ではなく「無関心」だ。無関心から文化は生まれない。

【月刊サイクルビジネスより改訂して再掲】

 

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