COLUMN コラム

【自活研・小林理事長の自転車コラムその1】 ~タンデムとヘルメット~

昔からタンデム自転車の一般公道走行可だった長野県に加えて、兵庫県、山形県、愛媛県、広島県がOKになった。和歌山県は自転車専用道路に限って解禁したが、その道までタンデムはどうやっていけばいいのだろう。クルマに積んで運ぶのでは、せっかくの環境負荷の少ない特性が台無しだ。中途半端な妥協策より、自己責任原則を大切にした方が良いように思う。
そもそも、なぜタンデムを禁止しているのかが理解できない。二輪の自転車は二人乗り禁止である。三輪以上になると、座席数に応じて乗車できる地域と、それでもダメよという県もあって、安全のための規制なのか、既成の法律や行政の都合によるものなのかわからない。とはいえ、いくつかの自治体で規制解除の方向に向かっていることは喜ばしい。
 安全についての議論のなかで日本特有の課題がヘルメットである。自転車先進国といわれるオランダやデンマークでは、ヘルメット着用は一般的ではなく、法律にもまったく書かれていない。といって、ヘルメットがまったくないかというとそうではなく、運転に不慣れな子どもたちやバランス感覚に衰えを感じている高齢者がかぶっていることが多い。つまりは、安全かどうかを自分で判断して決めているということだ。
 以前、デンマーク大使館の方をお招きしてセミナーを開催したとき、コペンハーゲンに「グリーンウェイブ」というものが存在することを教えてもらった。幹線道路の端に自転車専用レーンがある。欧州の都市には珍しくないが、コペンハーゲンの場合には、ラッシュアワーにそこを自転車で時速20kmで走っていると、直進信号がずっと青になり、交差点で止まる必要がない。2008年から本格供用されているとのことだが、自転車の平均時速が、15・5kmから20・3kmに上昇したという。クルマも40km/時で走ればいいのだが、市内の制限速度はおおむね30km/時に抑えられているため信号のたびに停止することになる。みごとに自転車優先社会なのである。道路や交通規制だけではない。クルマのドライバーは自転車を常に意識して運転しているし、交差点では先に自転車用信号が青になる。
 こうした走行環境があれば、ヘルメットは危険を感じる人だけのものになる。ところが、自転車の危険な環境を野放しにしている日本ではヘルメットは必須のアイテムである。歩道通行を常態化させ、交差点での出会い頭事故を誘発する施策を続けている限り、ヘルメットは生命を守る最後の砦だ。ヘルメットなしでも安全な交通環境を目指すべきなのに、着用義務を議論しているようでは真の自転車時代は来ない。
【月刊サイクルビジネスより改訂して再掲】

 

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