COLUMN コラム

【自活研・小林理事長の自転車コラムその10】~走れないサイクリングロード~

 日本で一番自転車乗りが多いコースと言われている東京と神奈川にまたがる多摩川サイクリングロードに、速度を抑制する目的で段差が設置されてからしばらく経つ。歩行者からの苦情に、警察が調布市に要請してできたらしい。「ゆっくり走ろう!サイクリングロード」と書かれた看板の先には、高さ約2センチ、奥行約8センチの帯状のものが、約1メートル間隔で4本並んでいる。これが数百メートルおきに延々と続く。自転車で走ると不快なだけではない。細いタイヤだとリム打ちパンクを誘発する。うかつに乗り上げると、ショックでハンドルから手が外れ、ふらついたり転倒する危険もある。道路幅いっぱいに細い帯状の盛り上がりがあり、これを避けるために道路脇に迂回路が自然発生的にできてしまった。
 同じような段差は府中市にもある。こちらはもっと平坦で、ショックも少ない。ということは、スピードを抑える効果も低い。東京の西側には、荒川サイクリングロードがあるが、荒川下流事務所が自転車は時速20km以下で、というローカルルールをつくって看板を立てた。やはり、歩行者との接触事故が増えたためだ。歩道である限り、道交法では「徐行」が原則である。時速20km以下は、クルマの「徐行」速度のはずだ。歩行者の通行を妨げる場合は「一時停止」も義務だ。幸か不幸か、荒サイの道は「緊急用河川敷道路」なので道交法の埒外だ。
しかし、サイクリングロードと呼ばれている道ですら「走ってはいけない」のでは、自転車はどこを走ればいいのか、という素朴な疑問に、国も自治体も答えられまい。クルマと一緒に車道を疾走すれば良さそうなものだが、道交法17条(車両は車道通行)を忘れたドライバーばかりなので、常に生命の危険にさらされる。日本国民には、健康的で、排気ガスも出さない自転車を選ぶ権利が保障されていないことになる。
 意図してか、考えもしないでやっているのかは判然としないが、国も自治体も、自転車時代をなんとかして到来させないようにしているような気がする。その一方で、健康や環境のために自転車を、と呼びかけるのだから、わけがわからない。そして、例年12月にはこのコースを使って「調布多摩川ロードレース」が開かれる。既に20回以上の歴史があり、年を追うごとに参加者も増えていた。段差だらけにして、参加者を減らすことが目的なのかと疑ってしまう。

【月刊サイクルビジネスより改訂して再掲】

 

 

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