2011年12月22日(木)
【自活研・小林理事長の自転車コラムその15】~ブレーキランプやウィンカーも登場する時代~
このコラムは、「時代がやってきた!」のに、どうもうまく対応してくれない業界への苦言を呈するものになりがちだが、今回は「絶賛!」である。
12月に開催された「エコプロダクツ展」に今年も自転車活用をテーマにしたブースを出した。3日間の動員数が18万人を超える、一日あたりでは最大級の展示会である。NPO自転車活用推進研究会は6年前から分不相応な巨大ブースを展開している。もちろん、そんな資金があるはずもなく、主催の日経新聞をはじめ、およそ自転車に無関係な企業や団体にも支援をお願いしてきた。化石燃料をがぶ飲みし、排気ガスと事故をまき散らし、地球を温めるクルマを控えて、人力で移動や運搬することが手軽にできる最も簡単な環境対策だ、というのが私たちの主張である。当初は「自転車と環境って何が関係するの?」と聞かれることも多かった。理解は進んだが、自転車が安全に走る道がないとの不満は根強い。昨年までは財団法人日本自転車普及協会が主催団体となって支援してくれたが、ついに事業仕分けの影響で撤退。自転車の健全な活用が国家的な課題となっているのに、どうしてこうなるのか、理解に苦しむ。自転車を活用するライフスタイルのあり方を考え、具体的に見せ、たくさんの人に気づいてもらうことが必要なのであって、単なる見本市にしてしまっては意味がない。自転車の健全な活用が地球を救うかも知れない、という原点が歪まないよう努力したつもりだが、いったいどこまでアピールできたか心許ない。
汗をかいて坂道を上るのがサイクリストの楽しみだとすれば、楽で安全で健康と美容と家計に貢献することが一般の喜びである。そこで、電動アシスト車の注目度は高く、パナソニック、ブリヂストン、ヤマハが参加した試乗会は大盛況だった。そもそも一漕ぎで時速10kmを超えてしまうアシスト車には、歩道での徐行は無理だ。だから車道を安全に走る工夫が求められる。何年も前から、アシストメーカーには安全対策をお願いしてきた。バッテリーを載せているのだから方向指示器やストップランプを付けるのは難しくない。オートバイと同じ安全装置を整備することで、自転車が車両であることの意識、車道走行の安全性は高まる。
私の積年の願いに応えてくれたのは、昨年まで参加していた三洋電機のエネループバイクだった。実用的な軽快車にブレーキランプを標準搭載したのである。ブレーキを引くと後方の赤ランプが激しく点滅するこの素晴らしい機能を、「おまけ」のようにしか宣伝していなかったが、私は大いに感激した。これこそ後続の自転車やクルマに追突される危険を回避する待望の切り札なのである。他メーカーの追随を期待したのだが、吸収合併したパナソニックサイクルテックの新型車にはこの機能がない。残念だ。
と思っていたら、ピープルという子供玩具のメーカーが、ウィンカーつきの通勤自転車を発表した。通勤に特化した自転車が必要とされ、安全を具体的に考える時代がやってきた。2012年にはこの流れがきっと加速するだろう。そう願いつつ、新しい年を迎える準備に余念がない。
来年も貧乏暇なし自転車操業が続くだろうが、めげず諦めず頑張るつもりだ。どうか引き続きよろしくお願いしたい。
【月刊サイクルビジネスより改訂して再掲】