COLUMN コラム

【自活研・小林理事長の自転車コラムその24】~「駐輪」を「サービス」のレベルにまでに高めよう~

以前、俳優の高橋英樹さんとTV番組でご一緒させていただいたことがある。
 その時のテーマは「駐輪」であった。
 放置されている自転車について「無駄な税金を注ぎ込む必要はない!あれは捨ててあると見なして即座に撤去、処分!」とおっしゃる。まさに桃太郎侍の面目躍如、小気味よく一刀両断である。私が恐る恐る「なかには盗まれて放置されているものもあって、その確認が・・・」と申し上げると、盗まれるような駐め方をする方も悪い、とばっさり斬り捨てられてしまった。さすがに編集でカットなのだが、本音で言えば私も大賛成、なんの異論もない。
  問題の本質は安心して駐車できる便利な駐車場がないことに尽きる。
  駐輪場に預けてあるのに盗まれたという報告を時折受け取る。インターネットには自転車盗難情報サイトがあるが、ちゃんとした駐輪場に二重のチェーン鍵を付けておいたのに盗まれた、というレポートがたくさんある。
  たかが自転車、と思うから「盗難やいたずらの責任は負いません」と平気で張り紙をしてある駐輪場ばかりだ。監視カメラで見張っていても、いざとなるとプライバシーだとか、捜査権がどうの、と言い訳ばかりで真剣に捜査してくれないのも現実である。自転車泥棒は数十年来わが国で最も多い犯罪であり、とても手が回らない事情もわかる。プロの泥棒相手では防ぎようもないだろうが、ほんの数パーセントしか検挙されていない自転車泥棒の、なんと!6割までが少年である。モラルもマナーもあったものではない。こうした子どもたちが大人になったときの社会は、想像するだに恐ろしい。小さなほころびから社会全体の崩落が起きると指摘する識者も多い。出来心の犯罪を未然に防ぐ工夫が欲しい。
  駐輪場というサービスの根本は預かった状態のまま客に返すという単純なものである。これができていない。
  そもそも自治体にとって、駐輪場は迷惑な放置を減らすための避難施設であり、サービスだという認識はほとんどない。駅前などの便利な駐輪場は、定期利用のために数ヶ月、あるいは何年も順番待ちを強いられる始末だ。これではサービス感覚は生まれない。このお役所仕事が、民間の駐輪場にまで伝染し「置かせてやる」と言わんばかりの対応が散見できる。
  駐輪場をサービス産業として運営するには、管理のプロに徹すること、メンテナンスや関連商品の販売を含めた附帯事業を拡大して、利用者を惹きつける魅力が必要だ。だが、これを阻む既得権益ががっちり構築されているのも現実である。
  好きだから高い良い自転車を買うんだけど、どういうわけかすぐ盗まれちゃうんだよ。放送ではもちろんカットされたが、実はそれが桃太郎侍の怒りの原点だった。

 【月刊サイクルビジネスより改訂して再掲】
 

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