COLUMN コラム

【自活研・小林理事長の自転車コラムその25】~勘違いをさらなる勘違いで上塗りするな~

 道交法上、自転車は「車両」に分類される。
 ところが日本では40年前の非常識な自転車歩道通行可規定によって、自転車利用者のほとんどと警察をはじめとする行政、果てはメーカーや業界の人たちまでが自転車を「歩行者の仲間」だと思い込んできた。この勘違いから生じる危険と不幸な事故を無くし、車両としての自転車本来の性能を発揮させ、都市交通の有為な手段として位置づけ、自転車市民権の確立を目指すことが、我が自転車活用推進研究会発足の目的である。
 勘違いの源は「歩道通行可」であることは明白なのだが、実態が定着し常識化してしまったために小手先の改革では改善されない。根本の間違いをそのままにして対処療法を繰り返すから、ルールが複雑で例外だらけとなり、守ることも守らせることもできなくなっている。
 2011年7月に警察庁は、標識標示令を改正し、歩道や自転車道で矢印方向に自転車を一方通行させる標識を新設して年内にも導入することを決めた。
 自転車を一方通行規制することに異議はない。増えつつある対面事故を防止する効果は高いだろう。そもそも自転車道を双方向可にしていることに無理があった。歩道や自転車道で、自転車がどちらの方向に進んでも良いというルールが、車道を平気で逆走する感覚につながっていることも確かだ。自転車が車両として車道を通行する限り、左側通行は当然であり既に道交法に明記されている。他の道路とは区分けされ独立した自転車道を一方通行化することも正しい。
 だが、歩道通行を前提としたまま「一方通行」規制をかけることには反対だ。
 左側通行原則で言えば、左側の歩道を自転車は通ることになる。その場合、左側通行すれば建物や塀に沿って通ることになり、店先や脇道からの出会い頭事故を増やすことになる。
 運転免許を持たない誰もが歩き、自転車に乗り、免許を持つ者が運転する車両などと共存して通行する道路交通のルールはシンプルで合理的、常識的でなければならないのに、またしても複雑化させ、例外をつくれば道路秩序はますます混乱する。
 これまで双方向通行が可とされてきた歩道上の「普通自転車通行指定部分」はどうするのか。ここを一方通行にすれば、勘違いした自転車の速度はますます上がり、対人事故は深刻化しかねない。
 答えは簡単である。一方通行規制標識の対象から「歩道」を除外すればいい。
 「自転車は車道が原則、歩道は例外」とは政府の自転車安全利用五則の筆頭項目である。国交省と警察庁が共同で公表した「自転車利用環境創出ガイドライン」では、この原則を貫いた方針を打ち出したが、現場でどう具体化できるかが今後の課題だ。勘違いの連鎖から脱却できるかどうか、地方の底力が試されている。

【月刊サイクルビジネスより改訂して再掲】
 

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