COLUMN コラム

【自活研・小林理事長の自転車コラムその33】~どっちでも良い、という中途半端が事故のもと~

 良い話と悪い話のどちらを先に始めようかと悩んで、やはり良い話から。
 道路交通法の改正が行われようとしている。毎年のように改正されて、歪んだ雪だるまのようにふくらんでしまっている我が国の交通法規の問題について、口を極めてののしってきたが、今回の改正は「キープレフト」を自転車にも明確にしようとしている点においては一応評価できる。
 改正案には、痴呆や精神疾患を抱える人だけでなく、アルコール中毒や麻薬や覚醒剤中毒など、いわゆる「アル中」「ヤク中」には運転免許を与えない、あるいは剥奪することが盛り込まれる。また、悪質な危険運転の厳罰化も行われる。あたりまえすぎる規定だが、果たしてちゃんと取り締まりができるかどうか、横暴なクルマの運転者に脅かされているサイクリストとしては実効性を高めてくれるよう祈るばかりだ。
 自転車に関しても、信号無視などを繰り返す自転車乗りには講習を義務づけること、ブレーキが付いていない自転車かなと思ったら警察官は停止を命じ、そうであればその場で使用停止にできるようにすること、そして「軽車両の路側帯通行を、道路の左側部分に設けられた路側帯に限る」とすることになった。画期的なのは路側帯のキープレフトだ。
 路側帯は法的には「歩道等」であって、歩道と同じく徐行し、歩行者の邪魔にならなければどちらの方向に向かって通行しても良いことになっていた。それを左側の路側帯をクルマと同一方向に通ることに変えようというのである。路側帯は狭い生活道路に多く、白線で車道部分と歩道部分を分けているだけなので、たとえば逆走している自転車が車道にはみ出すと途端にクルマと正面衝突する危険がある。それなら歩道も一方通行にしてしまえ、と考える人もいるだろうが、よく考えて欲しい。一昨年の10月25日に警察庁が発した通達には「3m未満の歩道における自歩可の交通規制は(中略)見直す」と明記されていて、今後、自転車が通れる歩道は無くなっていくはずなのだ。だから、歩道を走っても良い、と勘違いさせそうな規定は無い方が良い。今回の改正で、双方向通行ができるのは「自転車道」と消えゆく運命にある「自歩道」だけになる。
 で、悪い話。それでも歩道に自転車通行部分をつくろうとしている自治体が撲滅されない理由は、やはり首都・東京が悪いお手本を示しているからではないか、というお話しはまた次回。

【月刊サイクルビジネスより改訂して再掲】

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