2013年09月19日(木)
【自活研・小林理事長の自転車コラムその34】~良いことは素直に真似したほうがいいと思う~
20世紀末の地方自治法大改正によって、それまで国の下に都道府県があり、その下に市町村があってさまざまな仕事を国や県の権限に基づいて執行するというやり方が廃止され、それぞれは対等な協力関係にあるということになった。権能や予算で縛られていた事業が、それぞれの判断で行えることになり、永年の地方自治の夢が実現した。で、国民がハッピーになったかというと話はそう簡単ではない。自転車に深い関係がある話題でいうと、「安全快適な自転車利用環境創出ガイドライン」は示されたが、やるかやらないかはそれぞれの自治体任せ、補助金も出ないから時代感覚の希薄なところはまったくやる気が無い。やらなければならないことが山積していることはわかるが、総合的な戦略に乏しいためかやることがちぐはぐで、たとえば国が自転車事故の割合を減らすために「自転車は車両・車道左端通行」の方針を打ちだしても、そんな危ないことができるか!?とばかりに歩道に自転車の走る空間を整備してしまう。車道通行方針にはちゃんとした根拠も背景も、将来に向けての方針もあるのだが、車道の改善は無理、自転車は歩道へ逃がした方が安全、という40年以上前の既成概念で政策を進める。これが交通工学や道路工学に精通した人材に乏しい地方都市ならいざ知らず、首都・東京で行われるから事態は深刻である。
地方主権の建前で言えば、おらが町も東京と同格であるはずなのだが、そこはやはり大東京でやっていることは「見習うべき」いや「見習いたくなる」事例なのである。そこいら中に「なんとか銀座」をつくってしまう感覚は、一片の法律改正くらいでは変わらない。その肝心の東京で、最近見かけるのがあいもかわらず歩道に線を引き色を塗る自転車通行指定部分だ。一部では自転車横断帯を削り取り、ナビマークなる法定外標示を路面に描くなど、褒め称えたいこともやっているが、目立つのは歩道を我が物顔で走る自転車の波である。路上でお手本を示せ、と以前に書いたが、少しずつ警察官も車道を走り始めている。同様に全国のお手本であるべき東京が範を垂れなければ、永年染みついた勘違いは直らない。そこで最先端の自転車条例登場!を期待したのだが、世の中はそんなに甘くない。中身を見ると国のガイドラインとはまったく連動しない造りになっている。国と都が対等だからといって、互いの領分には決して踏み込まないで知らん顔というのは如何なものか。対等だからこそ協力して国民、都民のためにより良い方向を見いだす大人の知恵が欲しい。
【月刊サイクルビジネスより改訂して再掲】