COLUMN コラム

【自活研・小林理事長の自転車コラムその37】~BAAを国家基準に押し上げる努力を業界に求めたい~

日本経済、いや世界の経済のためにもアベノミクスが成功するよう祈るしかないが、はっきりしているのはエネルギーコストが上がり続けることだ。
アメリカが地中からむりやり絞り出しているシェールガスのおかげで、国際的な化石燃料コスト全体は下降気味だが、ここ数年の原油価格は1バレル(約160リットル)100ドルにまで上がっていた。アメリカでは都市部でガロン(3.785リットル)が5ドル、20世紀末の価格はガロン1ドルだったから、なんと!5倍である。クルマで移動するライフスタイルに慣れた国民は、ガソリン価格が数セント下がったところで焼け石に水で、特に低所得層の不満は非常に強い。自動車大国に時ならぬ新幹線ブームが巻きおこっている背景には、環境問題ではなく切実なエネルギー危機が横たわっているのである。
幸いなことにわが国では強烈な円高に救われて、市中のガソリン価格が20世紀末のほぼ2倍以内で収まっていた。が、円安は輸出企業にはとてつもない恩恵でも、海外からの調達に頼る産業には大打撃である。早晩、市中のガソリン価格は欧州並みのリットル200円超に到達するだろう。
つましく暮らす大多数の日本国民は、できる限り燃費の良い運転を心がけ、クルマを使う頻度を減らしている。ある程度裕福なら電気自動車への買い替えを検討するが、航続距離を考えるといっそのこと自転車を利用するのが賢明な判断であろう。クルマはおいそれと買えないし、買っても置く場所すらない。自転車なら2台目3台目と目移りしても壁の華にできる。ということで、もっと高級な自転車が売れても良いはずなのだが、走るところ、駐めるところが未整備で、マナーが悪い、貧乏たらしい、しょせんチャリなど、いわれのない悪評がせっかくの追い風にブレーキをかけている。
社団法人自転車協会はBAA,SBAA,+プラスと製品とサービスの高品質化をめざしているが、BAA登場から10年も経って参加メーカーはわずかに35社。国家基準に昇格させようという動きも見られない。せめてクルマ並みの信頼を勝ち得なければ、自転車文化は育たない。メーカー団体がなにをおいても取り組むべきは、自転車の安全規格の制定と欠格車の販売停止制度の導入ではないか。いつ壊れるかわからない粗悪品を買わされる一般庶民に、自転車の良さ、楽しさを説いてもむなしい。まずは政府と国会へのロビーイングを開始してもらいた。東北復興イベントも良いが、真に果たすべき役割を見失っているようでは自転車時代は拓けない。

【月刊サイクルビジネスより改訂して再掲】
 

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