2018年07月20日(金)
【自活研・小林理事長の自転車コラムその66】~日本発の電動アシストがガラパゴス化~
久しぶりに欧州へ行ってみた。今回ものんびりと数日間ずつ2都市に滞在した。
ビールの美味い南ドイツのミュンヘン(ミュニックとしか聞こえない)と、水の都・北イタリアのベネツィア。
自転車の視点で言うと、見事に両極端である。なにしろベネツィアでは自転車が見あたらない。運河と階段橋ばかりでクルマもない。ひたすらひたすら歩くしかない。コンパクトな街だから「歩いて暮らせる街づくり」の典型だが、「歩かなければ暮らせない街」であった。それこそがこの街の魅力なのでおおいに楽しんだが、高齢者には辛い。
とにかく観光客だらけで、世界中の人たちが混じり合って歩いている。高潮の時は水没するサンマルコ広場に、大航海時代の栄華を偲ばせる世界遺産を見物しに行ったのだが、いま記憶にあるのは世界中の「人」。
そんななかでも自転車でやってくる物好きがいる。貧乏旅行の若者から、けっこうな高齢の夫婦、4世代の大家族の集団などが人通りの少ない石畳を走っている。数十mも行けば降りて階段を押し歩くことになるのだが、それでも自転車で行きたがる。自転車ブームは世界的である。
一方、ミュンヘンは自転車だらけ。クルマと自転車の距離が近い。バスに乗っていると、ぎりぎりで自転車を抜いていく。互いに平気なようだから、自転車が急に止まったり、進路を変更したりすることはない、という了解が成立しているのだろう。都心の道路には自転車レーンがある。
日本の場合は「専用道」「専用通行帯」「通行指定部分」「自転車歩行者道」それに法定外の表示までが入り乱れ、何がどう違うのか説明が面倒だが、わが国以外では「レーン」のひと言で片付く。
多くは自転車の優先が認められている。日本では自転車道と書いてあっても、歩道指定されていて、走れないサイクリングロードという珍妙なものばかりだが、ドイツでは自転車の市民権は確立されていた。
街に立って日がな自転車を眺めていて、日本でも走る環境、駐める環境が整備されてくると小径車や折りたたみ自転車が少なくなるのではないか、と思った。そしてクロスバイク的な電動アシスト車が多いことにも驚いた。
ほぼ1割に達しているのではないか。多くは日本メーカーのパワーユニットだが、さすがにドイツである。
BOSCHのマークが目立つ。つい最近聞いた話では、販売台数は既に日本製を上回っているのではないかとのことだ。以前に乗っていた日本の電動ユニットの方が良かったよ、と笑っていた優しいドイツ人が忘れられない。
【月刊サイクルビジネスより改訂して再掲】
(2014/9に書いたものです)