COLUMN コラム

【自活研・小林理事長の自転車コラムその2】 ~被災地で活躍するノーパンクタイヤ~

東北大震災で大量のクルマが流され、ガソリンは品不足となり高騰した。ここぞとばかりに自転車が注目され、日本中のみならず海外からも自転車が贈られ大活躍している。過去の震災のときも真っ先に連絡・運搬を担ったのは自転車だった。
瓦礫の前で立ち往生するクルマやオートバイを尻目に、ひょいと担いで障害物を乗り越え、また走り出す自転車の機動性は素晴らしい。
 今回は大津波のためにガラス、金属、コンクリート、木くずがあらゆるところにばらまかれ、パンクが頻発した。パンクしにくい太いタイヤや樹脂入りのノーパンクタイヤをはかせた自転車を被災地に送った自治体やメーカーは偉い。パンク修理のボランティアは大歓迎され、補修キットや工具を持参して乗り込んだ整備士さんが車椅子まで修理したと聞いた。
 多くの自治体が撤去保管していた放置自転車を大量に送ったが、避難所にいる会員からの情報では、リムが歪んだり、スポークが折れていたり、すり減ったタイヤだったりしてまともに走らないものもあるという。自治体では程度の良いものを整備して送っているのだが、トラック輸送する過程で壊れたらしい。完成車をそのまま運ぶのはとても効率が悪いし、むつかしい。緊急事態なので適正配置ができず、使いにくい山坂の多い避難所に使われない自転車がずらっと並んでいて、数少ない電動アシストが引っ張りだこだとも言う。
 行政は避難所のケアで手一杯。いくら被災して困っていても避難所にいないと配給が行き渡らない場合があるという。2ヶ月も経つとプライバシーゼロの避難所より雨漏りする家のほうがましという気持ちもわかる。行方不明の家族を探しに行ったり、物資の調達のための足として自転車が欲しいと連絡を受けたが、そこの自治体に問い合わせるとそんな要望は報告されていないという。自治体職員も被災者なのだから無理は言えない。義援金を渡したくても担当する職員の数が足りないのが実態なのだ。
 天災を人災に発展させた原発問題に比べればはるかに些細なことだが、自転車のことばかりを考えていると、気になるのは防犯登録だ。復興が進むと所有者が定かでない自転車が問題になるかも知れない。これを契機に住基ネットとの連携を考えるくらいの知恵が欲しいと思うのは贅沢だろうか。
【月刊サイクルビジネスより改訂して再掲】

 

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