2011年06月10日(金)
【自活研・小林理事長の自転車コラムその3】 ~自転車にも安全装置を~
「空気と安全はタダ」とまで言われた「日本の安全神話」は福島原発でまさに神話となったが、身近な家の安全も買わされる時代がやってきた。2006年に新築住宅の住宅用火災警報器設置が義務化された。既存住宅は条例で今年6月までの設置期限内に付けなければならない。面倒だし、相当な出費を迫られるから無視する人も少なくないが、付けていないと失火の際に火災保険が適用除外になる可能性が出てくる。シートベルトをしていないと保険が効かないのと同じだ。クルマも高級車にはエアーバッグがいっぱい付いて、ボディも丈夫、乗ってる人はなかなか死ななくなったが、撥ねられた方はたまったものではない。 交通事故の死者のうち運転者は21%なのに、歩行者は33%、自転車も20%近い。クルマに乗っている方が歩くより安全な国は、先進国中日本だけである。いくら金をかけてもクルマの安全には限界がある。ドライバーが安全運転をしなければ事故は増えるばかりだ。死者は減っているが、事故はそんなに減っていない。教習場に金さえ払えば運転免許がたいていもらえる状況では、生命だけはとりとめてもひどい怪我で苦しむ人はいっこうに減らない。自転車も高級車が売れる時代になったが、自転車そのものの安全性は高まってはいない。なぜなら、人力で動く自転車の宿命として1gでも軽くしたい、そのために丈夫で軽い高級素材を使う方向に進むからだ。 一方で高齢者や子どもを持つお母さんたちから火がついて、最近では通勤用のシティバイクにも電動アシスト自転車が使われるようになった。歩道は「徐行」、人がいたら一時停止という法律は白チャリに乗る警察官が率先して破ってきた結果、有名無実化している。より重くなった自転車が歩道を疾走し、歩行者が歩道で自転車に怯えながら歩くというバカげたことになった。自転車が車道を安全に走ることができるように、車両としての最低の安全機能を備えるべきだと思う。安い乗り物に乗るヤツは危険であってもやむを得ない、なんてことは絶対にあってはならない。自転車利用者にも安全のためには最低のコストがかかるという常識が必要だ。まずブレーキランプ、そしてウインカーを、バッテリーを載せている電動アシスト自転車に標準装備することから始めて欲しい。ボタンを押している間だけ方向指示LEDが間欠点灯するなんて技術は初歩のはずだ。ブレーキランプが付けば、クルマも自転車を仲間と意識するだろう。と思っていたら、パナソニックに吸収される三洋電機のエネループ自転車にはブレーキランプが付いた。こういう良いところは会社が一緒になってもちゃんと受け継いで欲しい。 【月刊サイクルビジネスより改訂して再掲】 |